失踪10日目 10月22日 土曜日 運命

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週末なので、姉がランチに誘ってくれました。

 

朝、猫探偵から電話がありました。現状の問い合わせです。本来なら、私から連絡しなければならないところ、こまめに気にかけてくれるのです。

 

目撃情報がないので、様子見ですと伝え、姉と約束なので、夕方私から連絡させてください、と伝えました。

 

ランチを食べている姉を見ていると、こうやって憂いなくおいしく食事して、過ごしている人が羨ましくなりました。体を維持するために食べていますが、食事を楽しむゆとりなどありません。

 

食べて、普通に話していても、気がかりはいつもオッポです。食べていないだろう、水も飲めないのだろう、どこかにうずくまって居るのかなあ、とにかく常に考えてしまいます。

 

猫はいつも家にいてくれる。私は出かけても、帰ってくればいつも待っていてくれる。家族よりもずっと寄り添ってくれたのだなあ。

 

家に戻ると、SKさんからお電話。今日は高輪三丁目付近のマンションと、白金台のポスティングをお手伝いしてくださるそうです。ポスティングをしたところをマークする地図のコピーに行き、切張りしていると思ったより時間がかかってしまいました。

 

やっと地図ができたところで、6時頃、SKさんがみえました。チラシ、ポスター(チラシに付箋をつけたもの)、地図、懐中電灯を持って出発です。食欲がわかない私のために、サンドイッチや、甘いお菓子まで差し入れてくださいました。

 

みんなオッポを探し出すため、猫のため、とおっしゃって。どうやってご恩に報いたらいいのでしょう?

 

もう暗くなっていました。SKさんは、そのまま猫探偵になれるのではないか、と思えるほどの行動力です。ササーとポスティングをしていきます。初めてのマンションに、臆することなく入り、神業です。私は暗いところで地図にマークするのに、もたついていると、さっと、懐中電灯で照らしてくれます。

 

マンションや、個人のポストにポスティングなんて、気が萎えてしまう私です。オッポのためには、何でもできるはずでも、すぐに性格は変えられません。ほとんどひきこもりみたいな毎日でしたから。

 

8時くらいに終了して、続きは後日とお別れしました。家に帰ると猫探偵から着歴がありました。

 

かけ直すと、「目撃情報がでるまで、Mさん宅に預けておいた仕事道具を引き取りに来て、高輪にいる」とのこと。

 

こちらの猫探偵、私の家からバイクで2時間くらいのところから来てくださっています。それで、何もかもお願いできませんので、ポスター貼り、ポスティングなどは、私でやることになっているのです。

 

「ポスターの貼る位置はもう少し低めに」などと教えてもらっていると、携帯の電池切れでアダプターをセットしたところで、インターホンがなりました。見知らぬ男性が、「すぐ近くに猫がいるから、早く出てきて」と。

 

取り急ぎ、猫探偵に「うちまで来て、猫がいました」と電話して、家の外に急ぎました。懐中電灯を持った男性、「車の下だ」。うちの玄関からほんの、2-30メートルのところです。

 

このご夫婦、お住まいが高輪なのに、わざわざ白金台まで探しに来てくださっていたのです。

 

オッポは自分でまた桜田通りを渡り、住んでいたマンションのすぐ近くに潜んでいたのでしょうか?窓辺で鳴くチャーリーの声をきいていたのでしょうか?私が毎日餌を持って、高輪方面に出かけるのを見ていたのでしょうか?

 

本当にオッポなのでしょうか?男性の奥様が携帯で撮った写真を見せてくれました。ストロボで目が拡大していて、形相は変わっていますが、見慣れた耳カットです。

 

オッポだ。このタイミングで見つかるなんて。もし、猫探偵がすぐ近くにいてくれなかったら、たとえ見つけても捕獲はむずかしいでしょう。偶然にしても、すごいです。

 

オッポは車の下から出て、2件の民家の間50cmくらいの通路、どん詰まりのブロック塀の上に座って、こちらを見ていました。奥様の照らす懐中電灯で、目が光っています。

 

ここで、私が「オッポ、オッポ」と呼んでも、相手は外に放り出され、怖い思いもしてきた猫です。駆け寄ってきてご対面とはなりません。むしろ、近寄ろうとすると、隠れてしまいます。

 

ご夫婦は、高輪三丁目のパン屋に貼ってあったポスターを見て、ここ2-3日、オッポを気にかけ、探してくださっていたのです。だんな様が「自分の猫がいなくなったらと思うと辛すぎるから」と言って。

 

オッポ、皆さんに支えられ、助けられています。私のため、というより、オッポをうちに帰してあげたい一心で皆さんが動いてくれたのです。

 

そうこうするうち、猫探偵とMさんも、駆けつけてくれました。捕獲器をセットして、公園のベンチに座って待ちました。夜中、12時頃、なかなか入らないので、餌と捕獲器の向きを変えました。

 

しばらくすると、ガタンと音がします。入った??見に行くと、暗闇のケージの中に、白いシルエット。

 

猫探偵が捕獲器を持ち上げると、オッポは中で、怒りまくり。シー、フーと威嚇しながら、あばれています。捕獲器から出てしまわないか、と気が気ではありません。

 

家の窓全部に施錠して、捕獲器を開けると、オッポは押入れに駆け込みました。狭いチャーリーの寝ているところへ飛び乗り、2匹でかたまっています。そのままそっとしておきました。嬉しくて、嬉しくて、今までの苦労が吹き飛んだ瞬間です。

 

猫探偵、ご一緒してくれたMさんが帰り、夜中2時頃、オッポは小さく、カッカと鳴きながら押入れから出てきました。ご飯を食べて、なでると嬉しそうにします。私のオッポが帰ってきました。

 

スティングのプロが運命は、「命(いのち)を運ぶ」という意味だといっていました。オッポの命は、皆さんの善意に支えられ、運ばれて、私のところへ帰りました。帰ってきてくれる運命だったのです。

 

私が、帰ってきて、と望む以上に、オッポだって帰りたかったのだと思います。住み慣れたところ、仲間のチャーリーのいるところ。泣いてばかりで、頼りのない飼い主のところへ。

 

オッポを探してくださった奥様は捕獲に必要でしょう、と大きなオカカの袋をくださいました。ご連絡先を訪ねても、教えてくださいませんでした。きちんとお礼をお伝えすることもできませんでした。本当に、どうもありがとうございました。

 

オッポ捜索にかかわってくださった皆様、ありがとうございます。

猫探偵さん、私、言いたいことばかり言って、申し訳ありませんでした。名実ともに、一流の猫探偵です。